日本のお墓といえば、お寺の管理する墓地に作り、代々受け継いでいくのが一般的でした。
しかしこの形式は、お墓の後継者がいない場合に、お墓が無縁墓になってしまうリスクがあります。
そのような時の対処法として、近年注目されているのが「永代供養墓」です。
ここでは、永代供養墓の種類や特徴や費用の相場を解説します。
目次
永代供養とは、お墓(遺骨)の供養と管理を墓地管理者に委託すること
永代供養とは、継承する人がいなくなったお墓(遺骨)の維持管理と供養を寺院や霊園などの墓地管理者に三十三回忌など一定の期間に区切って委託する供養形態です。
後ほど触れますが、遺骨は一定期間骨壺のままで安置されるのか、最初から合祀といって土に返す埋葬方法なのかは、それぞれの永代供養墓によって違います。
本来は、長い年月をかけて故人を供養し、死後の世界での幸福を祈ることを指していました。
現在でもこの意味がなくなったわけではありませんが、単に「永代供養」といった場合は、お墓の管理方法(永代供養墓)を指すことが多いと思われます。
近年になって永代供養が注目されている理由は、少子高齢化の進行です。
子供が多かった時代は、家の跡継ぎがお墓を継承し、子々孫々にわたって守っていくことができました。
しかし近年では、子供が独立して遠くへ行ってしまったり、そもそも子供がいなかったりして、お墓の継承者がいないケースが珍しくありません。
もし継承者不在のままお墓の持ち主が他界すれば、お墓は無縁墓となり、いずれは朽ち果ててしまいます。
これはご先祖様に申し訳ないだけでなく、墓地の管理においても問題となるでしょう。
そのため、寺院墓地等にある家のお墓を住職に相談して永代供養にするか、永代供養専用の墓地に引っ越すケースが増えているのです。
また、お墓に対する価値観の多様化も影響しています。
従来のお墓は、管理するお寺の檀家にならなければ入れないのが一般的でした。
しかし、近年増えている永代供養墓は、宗教・宗派を問わずに入れるケースが多く見られます。
家のお墓に入ることを望まない方や、特定の宗教と関係なく眠りにつきたい方にも、永代供養墓地は適しているのです。
※寺院が管理運営する永代供養墓で、過去の宗旨・宗派は問わないとしている場合は、今後の供養は基本的にその寺院の宗派に沿った供養が行われる場合が多いです。
永代供養墓の主な形式は3つ
永代供養墓は、遺骨の管理方法によって大きく3つに分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
合祀型(合葬型)
複数名の遺骨を1ヶ所にまとめて埋葬する形式です。
スペースを取らないので価格は非常に安く、土地の狭い場所でも墓地を作ることができます。
ただし、遺骨は骨壷から出されるため、一度埋葬すると遺骨を区別できなくなり、取り出すこともできません。
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個別型
1人1人のスペースや墓石を確保して埋葬する形式です。
従来型のお墓を永代供養に変更した場合も、この形式に該当します。
「自分のお墓」を持てるのに加え、必要に応じて遺骨を取り出せるのがメリットです。
ただし、「永代」供養という名称から誤解されがちですが、「永久」に個別のスペースを確保できるわけではありません。
ほとんどの場合は、三十三回忌や五十回忌に合わせて「弔い上げ」を行い、合祀墓に移されることになります。
集合型
合祀型と個別型の中間的な形式です。石碑やモニュメントをシンボルとし、その周辺に遺骨を埋葬します。
1人当たりのスペースはコンパクトですが、個別のカロート(納骨室)やロッカーが設けられているため、遺骨を区別・回収することは可能です。
ただし、最終的に合祀墓に移される点は、個別型の永代供養墓と変わりません。
さまざまな永代供養墓
代々受け継いできた従来型のお墓でも、お寺にお願いすれば永代供養に切り替えることは可能です。
しかし近年では、永代供養の需要の高まりを受けて、さまざまな永代供養墓地が登場しています。
永代供養を考えているなら、これらの墓地も選択肢に入れるのがおすすめです。永代供養が基本となっている墓地としては、主に以下のものがあります。
屋外型永代供養墓
従来のお墓と同じように、屋外に作られているタイプです。
永代供養専用に作られた墓地の場合、個別型のお墓であったとしても、同じ形状のお墓が整然と並んでいる光景がよく見られます。
よりコンパクトなのは、石材でできたロッカーともいえる「納骨壇」を使うスタイルです。
従来のお墓とあまり変わらない環境を求める方に向いているでしょう。
納骨堂
遺骨を収蔵するスペースを設けた建物です。
ロッカーに遺骨を納める「ロッカー式」、上段に仏壇・下段に納骨スペースがある「仏壇式」、参拝時にのみ遺骨を収納場所から運搬する「機械式」などがあります。
広いスペースを必要としないため、土地に余裕のない街中でも作れるのがメリットです。また、天候に左右されず参拝できるという長所もあります。
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樹木葬墓地
墓石の代わりに樹木をシンボルとするお墓です。
大きく分けると、自然の山や森に植樹を行って墓地とする「里山型」と、公園のような環境を整備して墓地とする「公園型」があります。
季節の草花に囲まれて眠りにつけるイメージから、「死後は自然に還りたい」と考える方に人気です。
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永代供養の費用相場
永代供養を行う際、無視はできないのが費用の問題です。
永代供養の費用の相場は、遺骨の管理方法やお墓のスタイルによって大きく異なります。
現在ある先祖代々のお墓の遺骨を取り出して永代供養墓に移す場合、生前に自身の永代供養墓を探す場合等々、いろいろな状況があると思います。
無理なく永代供養を行うためにも、費用の相場を知っておきましょう。
従来型のお墓を永代供養する場合
もともと持っていたお墓の墓じまいをして永代供養にする場合、お墓を購入する必要がないため、発生するのは永代供養料と墓所撤去費用です。
永代供養料は、寺院によって大きな幅があります。
数万円で可能なところもあれば、100万円以上かかる寺院もあります。
また、納められている遺骨の数に比例して供養料が高くなる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
墓所撤去費用は、平米あたり10~15万円程度と言われていますが、墓石の大きさや総量、現場の工事の難易度等によっても金額が変わりますので、石材店の担当者に現地を見てもらったうえで見積もりを取らないと正確な工事費用はわかりません。
関連記事:墓じまいと永代供養について
永代供養専用の墓地の場合
永代供養墓地や納骨堂、樹木葬墓地などを購入する場合は、お墓の購入費用と永代供養料を合わせて支払うことになります。
料金は地域や立地、お墓のスタイルにも左右されますが、特に影響が大きいのは遺骨の管理方法です。
相場は概ね以下のようになっています。
合祀型:3万円~20万円
集合型:15万円~50万円
個別型:30万円~100万円
※さらに年間1万円~2万円程度の管理費がかかる場合あり
どの形式を選ぶにしても、「自分の場所」が広ければ広いほど、価格も高くなる傾向にあります。とはいえ、従来型のお墓に比べると安価なので、経済的に余裕のない方でも購入しやすいでしょう。
永代供養墓のメリット・デメリットと向き不向き
一口に永代供養墓といっても、その選択肢は実にさまざまです。自分に向いたお墓を選ぶためにも、永代供養墓のメリットとデメリットをまとめてみましょう。
永代供養墓のメリット
- お墓を継承する必要がなく、無縁墓になるのを防げる
- お墓の清掃や点検は、墓地の管理者に任せられる
- 永代供養専用墓地なら、宗教・宗派を問わずに入れるケースが多い
- 永代供養専用墓地は、従来型のお墓に比べて費用が安い
永代供養墓のデメリット
- 永久に管理してもらえるわけではなく、合祀されると遺骨が取り出せない
- 集合型や合祀型は、「自分(家族)のお墓」というイメージを持ちにくい場合がある
- 管理する会社や寺院の倒産・閉山などにより、管理が行われなくなることがある
- 上記の理由により、永代供養墓の利用を親族に反対される可能性がある
これらのポイントを考慮すると、以下のような方が永代供養に向いているといえます。
- 先祖代々のお墓の継承者がいない
- 子孫にお墓の管理の負担を背負わせたくない
- 引っ越しによってお墓が遠くなり、維持管理が難しくなってしまった
- 宗教・宗派にとらわれず眠りたい
- 家のお墓に入りたくない
- 「家のお墓」や「自分だけのお墓」にこだわらない
- お墓の購入費用を節約したい
実際に購入する際は、事前にしっかりと情報を集め、いくつかの候補を見学するのがおすすめです。
納骨堂や樹木葬墓地も人によって向き不向きがあるので、イメージや料金だけで決定してしまうのは望ましくありません。
必ず比較検討し、自分に合ったお墓を選びましょう。
まとめ
少子化が進行し続けている現代においては、永代供養墓の需要はさらに高まると考えられます。
お墓の後継者がおらず、無縁墓になってしまう可能性があるなら、永代供養への切り替えを検討するのが望ましいでしょう。
もちろん、メリットばかりではないため、自分に合った形式のお墓を選ぶことが大切です。じっくりと検討するためにも、まだ元気なうちにお墓探しを始めてください。
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