これからお墓を建てようとする仏教徒の方は、仏教とお墓に関して事前に知っておいて損はありません。
今回は、仏教のお墓と七つ宗派の特徴に関してそれぞれ簡単にご説明したいと思います。
仏教のお墓と五輪塔の意味
現在のようにお墓に墓石を使うようになったのは平安時代からと言われていて、当時のお墓は五輪塔といわれるものが一般的でした。
五輪塔は下から方形=地輪(ちりん)、円形=水輪(すいりん)、三角形(または笠形、屋根形)=火輪(かりん)、半月形=風輪(ふうりん)、宝珠形または団形=空輪(くうりん)によって構成され、古代インドにおいて宇宙の構成要素・元素と考えられた五大を象徴していて、『人が亡くなると肉体は五大に還元し、死者を成仏させ、極楽浄土へ往生させる』という仏教の教えをもとに作られたと考えられています。
現在のお墓は『竿石』『上台』『下台』の三段で出来た三段墓が一般的です。
天台宗のお墓
天台宗の開祖
最澄(さいちょう)
平安時代初期に最澄によって日本へもたされ、比叡山で開かれた宗派
天台宗の総本山
比叡山延暦寺(滋賀県大津市)
天台宗のお題目
南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
【主な経典】
般若心経、大日経、金剛頂経
天台宗の戒名
〇〇院☆☆◇◇居士(信士)⇒男性
〇〇院☆☆◇◇大姉(信女)⇒女性
天台宗の石塔に入れる梵字
石塔に梵字を入れる場合は『キリーク』『ア』の2通り有り、『~家之墓』以外にも『南無阿弥陀仏』と入れる場合もある。
【梵字とは】
梵字(種子)は仏、菩薩、明王、天などの諸尊を一文で表した特別な文字で、お墓の石塔上部に入れるのは、ご本尊様をお迎えするためと言われています。
真言宗のお墓
真言宗の開祖
空海(くうかい)
遣唐使船で中国に渡り学んだ中国密教を基盤として、高野山に金剛峯寺を創設。
真言宗の総本山
高野山金剛峯寺(和歌山県)
真言宗のお題目
南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)
真言宗の主な経典
般若心経、大日経、金剛頂経
真言宗の戒名
〇〇院☆☆◇◇居士(信士)⇒男性
〇〇院☆☆◇◇大姉(信女)⇒女性
真言宗の石塔に入れる梵字
石塔に梵字を入れる場合は『ア』で、『~家之墓』以外にも『南無大師遍照金剛』ときざむ場合もある。
浄土宗のお墓
浄土宗の開祖
法然(ほうねん)
南無阿弥陀仏を唱えれば極楽往生できるという教えに触れ、浄土宗を開宗。
浄土宗の総本山
知恩院(華頂山知恩教院大谷寺)
浄土宗のお題目
南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
浄土宗の主な経典
観無量寿経、無量寿経、阿弥陀経
浄土宗の戒名
〇〇院☆誉◇◇居士(信士)⇒男性
〇〇院☆誉◇◇大姉(信女)⇒女性
浄土宗の石塔に入れる梵字
石塔に梵字を入れる場合は『キリーク』で、竿石正面は『~家之墓』以外にも『倶会一処』『南無阿弥陀仏』ときざむ場合もある。
※倶会一処とは先に亡くなった肉親と極楽浄土でともに会うことができるという意味で受け入れられ、多くの人々の間で浄土信仰が支持された。
禅宗(臨済宗・曹洞宗)のお墓
臨済宗と曹洞宗の開祖
臨済宗・・・栄西(えいさい)
開祖栄西が天台宗を学び、二度の中国行きの後、鎌倉時代初期に京都・建仁寺の初代住職となり臨済宗が開かれる。
曹洞宗・・・道元(どうげん)
華やかな禅文化を嫌い、永平寺でひたすた座禅修行をすることを決意した道元によって開かれ、四代目の瑩山によって全国に広められた。
臨済宗と曹洞宗の総本山
臨済宗・・・妙心寺派 正法山妙心寺
曹洞宗・・・吉祥山永平寺(福井県吉田郡)、諸嶽山総持寺(神奈川県横浜市)
臨済宗と曹洞宗のお題目
南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)
臨済宗と曹洞宗の主な経典
臨済宗・・・般若心経、大悲呪、観音経
曹洞宗・・・般若心経、観音経、法華経、修証義、正法眼蔵
臨済宗と曹洞宗の戒名
〇〇院☆☆◇◇居士(信士)⇒男性
〇〇院☆☆◇◇大姉(信女)⇒女性
臨済宗と曹洞宗の石塔に入れる字
禅宗の棹石には『円相』という円い輪を入れます。(完全な悟りの境地を現したもので成仏を意味する)
『~之墓』以外にもご本尊の名号である『南無釈迦牟尼仏』ときざむ場合もある。
浄土真宗のお墓
浄土真宗の開祖
親鸞(しんらん)
法然の弟子の親鸞が法然の『念仏の教え』を元に、念仏には信心が大切であると強調した『信心念仏』によって浄土教を完成させる。
八代目の蓮如によって全国最大規模の教団組織に発展した。
浄土真宗の総本山
本願寺派・・・西本願寺(京都市下京区)
大谷派・・・東本願寺(京都市下京区)
浄土真宗のお題目
南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
浄土真宗の主な経典
仏説無量寿経、仏説阿弥陀経、仏説観無量寿経
浄土真宗の法名
釈〇〇⇒男性
釈尼〇〇⇒女性
浄土真宗の石塔に入れる梵字
禅宗の棹石には『~家之墓』以外にも『南無阿弥陀仏』『倶会一処』『~家総廟』などをきざむ場合もある。
浄土真宗のお墓の特徴
塔婆を立てない。
日蓮宗のお墓
日蓮宗の開祖
日蓮(にちれん)
「法華経」こそが釈迦最高の教典との確信を得て立教を宣言する。
「南無妙法蓮華経」の題目を唱え、善行を積めば何人も救われると説いている。
日蓮宗の総本山
身延山久遠寺(山梨県南巨摩郡身延町)
日蓮宗のお題目
南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)
日蓮宗の主な経典
法華経
日蓮宗の戒名※法号
〇〇院☆日◇◇居士(信士)⇒男性
〇〇院☆妙◇◇大姉(信女)⇒女性
日蓮宗の石塔に入れる梵字
禅宗の棹石には『~家之墓』以外にも『妙法』『妙法蓮華経』などをきざむ場合もある。
まとめ
仏教各宗派それぞれの特徴とお墓にきざむ文字を簡単にですが、ご紹介させていただきました。
これからお墓を探そうとお考えの方には事前知っておいて損はないと思いますし、既にお墓をお持ちの方(特に寺院墓地)にも、もう一度宗派の特徴を簡単におさらいしていただけたのではないでしょうか。
お墓や供養の形が多様化している現代だからこそ、ひとつひとつの意味をよく理解しておくことも大切だと感じます。
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