
仏教用語のなかには、日常の生活ではあまり聞くことのない単語があります。「施餓鬼」もそのうちのひとつでしょう。
ここでは、まずは「施餓鬼とは何か」を取り上げたうえで、その意味や塔婆、お布施などについて解説しながら、「施餓鬼は絶対に行かなければならないのか」という疑問に答えていきます。
目次
施餓鬼とは、「餓鬼に施すこと」を意味する言葉
「施餓鬼」は仏教用語のひとつであり、「餓鬼道にいる餓鬼に対して、食べ物を施すことまたそのようにする供養」のことをいいます。「施食会(せじきえ)」と言われることもあります。
餓鬼道とは、生前に悪行をなした人間が落とされる世界です。ここに落とされた人は、常に飢えや乾きに苦しめられることになります。しかしそのような餓鬼に対しても食事を施し、その身を思いやろうとするのが、この「施餓鬼」の意味です。
施餓鬼の考え方は、仏弟子阿難のエピソードから来ています。ある日阿難の目の前に餓鬼が現れ、「お前はもうすぐ死に、俺と同じように餓鬼になるのだ」と告知してきたために、阿難は仏様に相談に行くことになりました。そのときに仏様は、「観音菩薩の呪文を唱えながら餓鬼に食べ物を与えれば、その身は救われる」とアドバイスをします。これに従い阿難が施しを与えたところ、餓鬼も阿難も救われたと伝えられています。
なお仏教にはいくつかの宗派がありますが、「施餓鬼がどれほど重要視されるか」は宗派によって異なります。たとえば禅宗では施餓鬼は非常に重要なものとして位置づけられていますが、「仏様を信じ、念仏を唱えれば、人はすぐに浄土に旅立てる」として「冥途」の考え方を持たない浄土真宗の場合は施餓鬼の考え方自体がありません。
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施餓鬼を行う時期は特に決まっていない
この施餓鬼を行う時期は、特に決められていません。ご家庭ごとで任意のときに行えばよいとされています。ただ、ご先祖様の供養を行うお盆の時期にあわせて、施餓鬼を一緒に行うことが多いといわれています。
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施餓鬼を行う場合は、お寺に対して3000円~10000円程度の御布施を包みます。
基本的には施餓鬼はお寺で行うことになる供養であり、希望すれば塔婆(とうばを建てることもできます。なお塔婆とは仏教における「仏塔」のことを指すものであり、経文などを書き記したものです。塔婆を建てる場合は、別途お布施が必要となります。ちなみに塔婆の費用はお寺によって多少の違いがありますが、おおむね3000円もしくは5000円であることが多いようです。
なお、「仏事に使う不祝儀袋といえば、黒と白の水引を使ったもの」と思う人も多いかと思われますが、施餓鬼の場合にお渡しする御布施にはこれは使いません。黒と白の水引のついた不祝儀袋は、だれかが亡くなったときに使うものですから、基本的には施餓鬼の場合はこれを使うことは避けるのです。もっとも正式なのは奉書紙に包んで渡すことですが、白い封筒に入れてお渡ししてもよいでしょう。なおこの場合の表書きは「御布施」とします。不祝儀とは意味が異なるものなので、薄墨は用いず、一般的な濃墨を使うようにしてください。
ただし、施餓鬼に限らず、不祝儀袋の考え方は地域差があるので、心配な場合は周りの人に聞いてみるとよいでしょう。
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施餓鬼は必ず行わなければならないもの?
ここまで施餓鬼について解説してきましたが、「お盆の時期になると、施餓鬼の案内がお寺から来る。でも正直行きたくない……」という人もいるのではないでしょうか。
施餓鬼は、極論すれば「行かなくてもまったく問題がないもの」だといえます。
そもそも施餓鬼は仏教の考え方に基づくものですから、「仏教への帰属意識が極めて薄い」「一応菩提寺はあるものの、父親の葬儀のときにぞんざいな扱いをされたからそのお寺にお金を渡すようなことはしたくない」「時間がなくて地元に戻ることができないし、お寺との関係も疎遠である」ということならば、行わなくてもまったく問題はありません。仏教に限ったことではありませんが、宗教的な儀式というのは、あくまで「それを行いたいと思う人が自主的に動いて初めて意味があるもの」です。本人やご家族が施餓鬼を行いたくないあるいは行う必要性が薄いと感じたのならば、施餓鬼を行う必要はありません。
ただ、宗教的な儀式は「心」によるものであるため、家族のなかのだれかが、「施餓鬼をしなければ落ち着かない」「施餓鬼をしなければなんとなく収まりが悪い」ということであれば、その人のために施餓鬼に赴くのもよいでしょう。
なお現在は多少収まりつつありますが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響は依然として存在し続けています。そのため実際に施餓鬼に足を運ぼうと考えたのであれば、行く前に、「そのお寺がどのようにして施餓鬼を行っているか、参加できるのかできないのか」などを確認しておくようにしましょう。
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